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総フォロワー50万人超。「耳で聴く美術館」aviが語る、“美術を仕事にする”発信のつくり方

美術展やアーティストを紹介するショート動画で支持を広げる「耳で聴く美術館」。
その運営を担うaviはSNSを起点に、ときには美術館から直接依頼を受けるという、独自のポジションを築いてきた。

バズだけでは続かない美術の世界で、どのように“仕事につながる発信”を成立させているのか。その裏側にある考え方を聞いた。

■“解説系”から“現場型”へ。独自性で仕事を生む

――まず、現在の活動についてお伺いしたいです!

avi:
主に、美術展や作家についての発信をSNSで行っています。
Instagram・TikTok・YouTubeを中心に、フォロワーは合計で約50万人。2021年の夏から本格的に始めました。

「展覧会に人を呼びたいから動画を作ってほしい」——そういったご依頼に応じて動画を制作することが活動の軸になっています。

――活動当初から”現場で撮るスタイル”でしたか?

avi:
いえ、最初はモネやゴッホといった西洋画の解説をしていました。図書館に通ったり本を購入したりして情報を集め、それをまとめて動画にする形でした。

ただ、その分野は競合が多く、参入障壁も低いんですよね。スタートとしてフォロワーを増やす上では良かったのですが、「自分にしかできない形にして、きちんと収益につなげたい」と思い、方向転換しました。

そこで、自分で展覧会に足を運び、素材を撮影し、それを使って説明するスタイルに変えたんです。
かなり手間はかかるのですが、それを見た美術館から「同じような動画を作ってほしい」と依頼が来るようになり、徐々に仕事が広がっていきました。

オープンな態度で話している人物と、ジャンルを問わず多様な本やメディアに囲まれたインタビューシーン

バズらせすぎない。美術とSNSの距離感

――仕事に繋がっていくのは、耳で聴く美術館の動画に影響力や話題性、魅力があるということですよね。動画制作をしているなかで、どのような動画が伸びやすいと感じていますか?

avi:
やっぱり作品がいいと伸びます。作品自体の強さと、映像として見たときのインパクトがあるかどうかですね。逆に、日本画のように繊細で、画面で伝わりにくいものは伸びにくい傾向がありますね。

――確かに動画から繊細な機微を感じ取るのは難しいかもしれないですね……。作品ごとに見せ方を変えることもあるのでしょうか?

avi:
変えています。挑発的な作品はある程度の拡散を見越していますが、繊細な作品は静かに広まる方がいいと思っています。

これは完全に自分の判断ですが、バズった後のことを考えて作るようにしています。

――見せ方でいうと、バズを狙った制作もできるってことですよね。

avi:
できますね。強い言葉を使ったり、炎上気味の表現をすれば伸ばすことはできます。

ただ、それをやると美術業界の中で長くやっていけないと思っています。なので、バズることが目的にならないよう、クライアントさんの意向を汲んだ上で安全圏で制作をすることが多いです。

続けられる理由は「1日で終わる達成感」

――下調べから現地での撮影、編集、投稿……。とても大変な作業の連続だと思います。継続のコツってありますか?

avi:
コツは動画を1日で完成させられるようにしていることです。私の動画はそんなに編集が重くないので、頑張れば数時間で1本作れます。

「1日で1本できた!」 という達成感がすごく好きで、それがあるから続けられていると思います。

――制作自体も楽しんでいる?

avi:
そうですね。BGMをつけるのが楽しくて、自分がDJになったような感覚で作っています。音楽が入ることで動画の厚みも出て、「いいものができたな」と思えるんです。

最近は逆にBGMを使わず、現場の音を入れることにもハマっています。展示会場のざわざわした音や、人の声、車の音などをそのまま入れて、ライブ感を出しています。

チームでつくることで、止まらない仕組みに

――「耳で聴く美術館」は数人のチーム運営なんですよね。

avi:
そうです。最近は「耳で聴く美術館のavi」と自己紹介することで、チームでの活動と捉えてもらえるよう意識しています。

メンバーは高校の同級生が中心です。もともと友人が映像ディレクターとして独立するタイミングで「一緒にやろうか」となり、そこから少しずつ増えて今の体制になりました。

それぞれ得意分野が違って、機材に強い人、事務作業が得意な人などがいます。自分はメールや請求書がすごく苦手なので、それを得意な人に任せることで効率よく回せていますし助かってます。

――チームで進んでいく一番のメリットはなんでしょう?

avi:
継続できることですね。妊娠・出産で現場に行けない時期があったんですが、その間も投稿は止まりませんでした。

一人だったら確実に止まっていたと思います。動画って一度止まると、そのまま作らなくなってしまうことが多いので。

あと、クリエイターって本当に人と話さないので、友達と一緒に進んでいけるのは精神的にも大きな支えになっています。

椅子に座った若い人物が微笑んでいる。背景には本や漫画が並ぶ棚があり、色とりどりのアイテムが見える。

「何者かになりたい」という焦りの先に

――発信を継続する中で苦労したり悩んだりすることも多々あると思うんです。発信し続けることは簡単な道ではないですが、その中でも「活動を続けていて良かった」と思うことはありますか?

avi:
一番は、動画を通じてできた友人と出会えたことです。同じクリエイター同士で価値観も近いので、すごく大きな存在です。

それと、「何者かになりたい」という焦りから解放されたことも大きいです。

――「何者かになりたい」という焦り、というと?

昔は「自分という存在を知られずに終わるのが怖い」と考えていました。でも今は、本を出したり発信を続けたりする中で「この時代に自分はいた」と残せる感覚があって、それが安心感につながっています。

――抱えていたひとつの焦りから解放されて、この先やっていきたいことはありますか?

avi:
動画は拡散力がある分、寿命が短いと感じています。なので、文字コンテンツも増やしていきたいです。実際にコラムを書いたり、本の仕事もしています。

それと、若手作家の作品をSNSから直接販売できる仕組みを作りたいです。

――確かにSNSでアート作品を買ったことないし、やり方もよくわからないです……。気になる作品を気軽に手に入れることができる仕組みがあるといいですよね。

avi:
以前、ある作家の動画が海外でバズって、私に購入希望の連絡がたくさん来たことがありました。でも自分は販売できる立場ではないので、その流れを活かせなかったんです。

そこにすごくもどかしさを感じていて、チャンスはあるのに仕組みがないという課題を強く感じています。美術業界の今後のためにもなんとか改善していきたい課題です。

座って本を持っている人物と本棚があるカフェの様子

「続けること」が、すべてにつながる

――最後に、今まさに発信や制作に向き合っているクリエイターへメッセージをお願いします。

avi:
すでに活動している人に対しては、「いかに気軽に動画を作れるか」を考えて、作り続けてほしいです。続けないと、活動も収益も全部終わってしまうので。

あと、楽しめることが一番大事です。楽しくないと続かないので、自分が楽しいと思えるポイントをちゃんと見つけることが大切だと思います。

――ありがとうございました! 最後に、アニメのメディアにちなんで、好きなアニメについても聞かせてください。

avi:
昔『進撃の巨人』を見ていたんですが、途中で一度やめてしまっていて。ただ、いわゆるセリフが流れる“切り抜き動画”を見て、「かっこいいな」と思ったのがきっかけで、もう一度見直しました。

切り抜きって、作品に触れるきっかけとしてすごく強いと思っていて。他の作品も、切り抜きを見てから見始めたことがあります。そういう意味で、切り抜きは新しく作品に出会う入口になる存在だと思います。


バズだけでは終わらない、美術とSNSの関係。

「耳で聴く美術館」は、その間にある繊細なバランスを取りながら、新しい“メディアの形”を切り開いている。

プロフィール

青い髪の若者が、手で口を隠している写真。白と青のタイダイパターンのフーディを着て、室内の壁の前に立っている。

耳で聴く美術館 avi

1992年、大阪生まれ。名画や各地の展覧会情報など、美術に関する情報を動画で紹介。美術への敷居を低くし、誰もが気軽にアートをたのしめるコンテンツづくりが得意。神戸大学発達科学部にて美術教育を学び、教員免許及び学芸員資格を取得。2021年よりTikTokを開設し、YouTube、Instagramなどでもタイムリーな情報を発信。森美術館や寺田倉庫のTikTok LIVE配信に出演。彫刻の森美術館や国立工芸館との展覧会広報に携る。アーティストとのトークショーの司会なども務める。

TikTok:https://www.tiktok.com/@mimibi301?is_from_webapp=1&sender_device=pc
Instagram:https://www.instagram.com/mimibi_art301/
YouTube:https://www.youtube.com/channel/UCxkKTVI1mhqnL0lBwhGeH2Q

書籍

耳で聴く美術館aviのイベント告知ポスター。青空の下、黄色い太陽と緑の地面が描かれている。心が震えるアートについてのトークの内容が示されている。

耳で聴く美術館aviと心が震えるアートの話をしよう

仕様:A5判/並製/160ページ

発売日:2026年3月26日

税込定価:1,980円(本体価格1,800円)

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